小津安二郎監督のファンの私は先日、笠智衆、岩下志麻主演の「秋刀魚の味」を見ました。細君と死別し、清純可憐の娘を嫁がせる父親の物語です。父親の愛情、哀れみに強く心を打たれました。
披露宴の後、父親はバーに行きました。ママさんは正装の父親の悲しい表情を見て、「葬式でしたか?」と聞きました。父親は「みたいなもんだよ」と淡々に答えました。娘は嫁に行き、新しい人生が始まります。それは、父親にとって、人生の夕暮れに向かったようです。
子供のごろから、孔子の「父母在,不远游」(親は活きる限り、子供は遠く行きません。)という言葉を学びましたが、生活に当てはまりません。気ままに故郷から離れ、異郷の生活に慣れて来ました。「あなたさえよければ、私たちは嬉しいよ。」というのは、親の口癖です。
最後、父親はで台所で、一人ぼっちの酔っ払いの姿はなんと寂しいものです。映画館で、私は、静かに涙が流れました。